特定商取引法とは

特定商取引法とは、消費者と事業者との間でトラブルになることが多い取引についてその取引のルールを定めている法律です。過去に消費者被害を引き起こした取引について、不当な契約が結ばれないように事業者を規制し、悪徳商法等から消費者を保護すると共に消費者被害を解決しやすい制度を定めています。

 

特定商取引法の規制対象の取引

特定商取引法では次の7種類の取引を規制しています。
訪問販売
通信販売
電話勧誘販売
連鎖販売取引(マルチ商法)
特定継続的役務提供(エステティックサロン・語学教室・学習塾など・家庭教師など・パソコン教室・結婚相手紹介サービス)
業務提供誘引販売取引(内職商法・モニター商法)

訪問購入(押し買い)
※2012年の特定商取引法改正により新たに訪問購入が規制対象となりました。

①訪問販売とは

店舗以外の場所での販売。自宅へ訪問する「押し売り」がその一例ですが、消費者にすれば買うはずではなかったのに、不意打ちであるがために知識や情報不足で事業者のペースで契約させられてしまうことが多く、後々トラブルになりやすいために規制されている取引です。
なお、特定商取引法の訪問販売には以下の取引も含まれ適用範囲が拡大されています。

●「キャッチセールス」・・・街頭など店舗以外の場所で声をかけ店舗に同行させた場合や、店舗以外でもファミリーレストラン・路上での取引も対象です。
●「アポイントメントセールス」・・・契約の勧誘目的であることを隠して呼び出した場合。電話や郵便を使い店舗等に消費者を呼び出し、商品の購入を勧めます。アポイントメントセールスには、「デート商法」・「催眠商法」・「ホームパーティー商法」も含まれます。
訪問販売として特定商取引法が適用されない契約の一例として次のものがあります。
●会社などが従業員に対して行った場合
●消費者が契約するために事業者を自宅等に呼んだ場合

●商品の代金が3000円未満の場合

●過去に一定の取引があり信頼関係がある場合(御用聞きや百貨店の外商等)

 

②通信販売とは

テレビ・インターネットのホームページ・カタログ・ダイレクトメール・新聞広告などを通じて、電話や郵便、FAX、インターネットなどの通信手段を使い申し込みをする取引のことです。
通信販売も特定商取引法で規制されていますが、クーリングオフについては認められていません。しかし、平成20年の法改正により返品制度が導入されました。通信販売で購入した商品の到着後、8日以内であれば返品できることを認める制度です。クーリングオフとの違いは、通信販売の広告やホームページに返品できない旨の記載がある場合には返品が出来ないことです。従って購入の際に返品可と返品について記載されているかどうか確認する事が大切です。
しかし、返品不可と記載があっても、事業者の責任による商品の破損や欠陥は民法に基づいて返品できる場合があります。

③電話勧誘販売とは

事業者が消費者の自宅や職場に電話をかけて商品などを売り込み契約させるものを指します。例として職場に電話をかけて資格取得講座などを売り込み、断っても繰り返し執拗に電話をかけてくるケースや、自宅に電話をかけて浄水器やカニなどの魚介類をしつこく勧めるケースがあります。
事業者からの電話によりその場で契約した場合はもちろん、いったん電話を切って消費者から電話をかけて申し込みをしたり、FAXやメールなどで契約の申し込みをする場合も含まれます。

 

④連鎖販売取引(マルチ商法)とは

1960年代にアメリカから入ってきました。マルチ商法と呼ばれることの方が多い。
儲かると言われその組織で扱っている商品を購入し、自分の下に会員(販売員)を勧誘して増やしていくことによって、自分自身は活動しなくても利益が得られるようになるという仕組みですが、実際に利益が得られるのは組織の上層部の一部です。
会員(販売員)の勧誘に熱心になるあまり、仕事を辞めてしまって家族の生活まで不安にさらしたり、友人・知人を誘った結果、人間関係を損ねてしまうといった被害をもたらすことがあります。こうした深刻な被害が多発したことから、特定商取引法の規制対象としました。

マルチ商法と似た悪徳商法にねずみ講があります。ねずみ講は金銭を支払って会員になり、他の会員を紹介することにより出資した額を超える金銭を受け取れるというものです。マルチ商法は商品を介して会員を増やしていきますが、ねずみ講は商品ではなく金品を介して会員を増やしていくという違いがあります。法律上はねずみ講は全面的に禁止されているのに対し、マルチ商法は法規制を加えるにとどまっています。

クーリングオフ期間経過後の契約解除(中途解約)について

クーリングオフ期間経過後の契約解除(中途解約)は連鎖販売契約と商品販売契約(連鎖販売をするために必要として購入させられた浄水器などの商品販売契約)を分けて考えます。
※連鎖販売契約:クーリングオフ期間経過後も将来に向かって契約を解除できます。
※商品販売契約:以下の条件をすべて満たせば、商品販売契約を解除することができます。

入会後1年を経過していないこと

引渡しを受けてから90日を経過してない商品であること

商品を再販売していないこと

商品を使用または消費していないこと(商品の販売を行ったものがその商品を使用または消費させた場合を除く)

自らの責任で商品を滅失またはき損していないこと

⑤特定継続的役務(えきむ)提供とは

一定期間にわたってサービスの提供を受ける内容の取引のことです。
エステティックサロン(契約期間1ヵ月以上・支払総額5万円を超えるもの)、語学教室・学習塾など・家庭教師など・パソコン教室・結婚相手紹介サービス(契約期間2ヶ月以上・支払総額5万円を超えるもの)が特定継続的役務提供として特定商取引法の規制対象になります。
以前は月謝制やその都度の支払いが普通でした。しかし最近ではこれらのサービスを一定期間・一定回数まとめて契約し、個別クレジット会社が受講料などを一括で事業者に支払い、消費者は分割で支払う方法が主流となりつつあります。消費者にとっては月々分割で支払うので月謝制と変わらない感覚を持ちますが、同じではありません。

2010年に大手英会話スクールのジオスが倒産しました。倒産してしまうと英会話を受講することが出来なくなり、支払った受講料を取り戻すことも難しくなります。このように事業者が倒産してしまうと、消費者が大きな被害をこうむる危険性があります。

 

特定継続的役務提供では関連商品を購入することが多いのが特徴です。例えばエステティックサロンでは化粧品や美顔器、学習塾ではテキストやCD・DVDなどです。

過去に抱き合わせで販売させることの多かった商品を政令で指定し関連商品として、サービス取引と一体として取り扱うとしています。つまり、サービス取引がクーリングオフできる場合には関連商品も一緒にクーリングオフできます。

 

関連商品一覧

エステティックサロン 健康食品・化粧品・せっけん・浴用剤・下着美顔器
 語学教室・学習塾など・家庭教師など  書籍・CD・DVDなど・ファクシミリ装置及びテレビ電話装置
 パソコンスクール  パソコンと部品付属品・書籍・CD・DVDなど
 結婚相手紹介サービス  真珠・貴石・半貴石・指輪・その他装身具

 

クーリングオフ期間経過後の契約解除(中途解約)について

消費者は、クーリング・オフ期間の経過後においても、将来に向かってその契約(関連商品の販売契約を含む)を解除(中途解約)することができます。(特定商取引法第49条)
その際、事業者が消費者に対して請求できる損害賠償などの額の上限は、以下の通りです(それ以上の額をすでに受け取っている場合には、残額を返還しなければなりません) 。損害賠償額などの上限は契約の解除がサービスの開始前か開始後かによって異なります。
 
契約の解除が役務(サービス)提供開始前である場合

契約の締結および履行のために通常要する費用の額として役務ごとに政令で定める以下の額。

エステティックサロン

20,000円

語学教室

15,000円

家庭教師 20,000円
学習塾 11,000円
パソコンスクール 15,000円
 結婚相手紹介サービス  30,000円

②契約の解除が役務(サービス)提供開始後である場合(aとbの合計額)

a 提供された特定継続的役務の対価に相当する額

b 当該特定継続的役務提供契約の解除によって通常生ずる損害の額として役務ごとに政令で定める以下の額

エステティックサロン

2万円または契約残額の10%に相当する額のいずれか低い額

語学教室 5万円または契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額
家庭教師

5万円または当該特定継続的役務提供契約における一か月分の

授業料相当額のいずれか低い額

学習塾

2万円または当該特定継続的役務提供契約における一か月分の

授業料相当額のいずれか低い額

パソコンスクール 5万円または契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額
 結婚相手紹介サービス 2万円または契約残額の20%に相当する額のいずれか低い額

 

⑥業務提供誘引販売取引(内職商法・モニター商法・資格商法)とは

内職商法とは内職を紹介・提供すると誘い、内職をするために必要な商品(道具類)を購入させたり、内職をするために知識や技術が必要と説明して教材や通信講座の契約をさせるというものです。これらを購入すれば仕事を紹介・提供してもらえると思い契約するのですが、説明されただけの仕事をもらえず、購入した商品(道具類)や教材・通信講座の支払いだけが残ります。
モニター商法とは事業者の商品を購入しモニターになり毎月アンケートに答えることにより、収入が得られ実質タダで商品を購入できると誘うというものです。やはり実際にはモニター料が支払われることは数回で、購入した商品の支払いだけが残ります。

 

内職商法やモニター商法では、パソコンや浄水器といった商品をクレジット契約で購入させるということがよくあります。当初の説明と違い仕事が紹介・提供されないとかモニター料が支払われないとの理由でクーリングオフをする場合、クレジット会社との契約もクーリングオフすることが可能です。その場合には事業者とは別にクレジット会社に対しても、クーリングオフをする旨の通知を出すことが必要です。

⑦訪問購入

買い取り業者が自宅にやって来て「指輪や貴金属があれば査定し、高く買い取ります」などといって強引に売却を迫り、市場価格よりかなり低い価格で買い取っていく取引のことです。押し買いともいわれます。

 2010年頃から被害が多くなりましたが、特定商取引法では押し売りは規制できても押し買いは規制できませんでした。そこで2012年の法改正により訪問購入を規制対象に追加しました。

※訪問購入に独特の主な規制内容

①氏名等の明示義務(第58条の5)

 購入業者は勧誘に先立って氏名または名称、売買契約の勧誘目的であること及び、購入商品の種類を明示しなくてはなりません。

②勧誘の要請をしていない者に対する勧誘等の禁止(第58条の6)

 ・購入業者の飛込での勧誘は禁止されています。消費者から要請されて訪問することは良いが、要請されていない相手方を訪問勧誘したり、訪問して勧誘を受ける意思の有無を確認する事も禁止されています。

 ・購入業者は勧誘に先立ち、その相手方に勧誘を受ける意思が有ることを確認しなくてはなりません。(訪問販売では努力規定だが、訪問購入では義務規定とされた)

 ・購入業者は訪問購入の売買契約を締結しない旨の意思を表示した者に対して、契約を締結するように勧誘してはなりません。

③物品の引渡しの拒絶に関する通知(第58条の9)

 購入業者は相手方から直接物品の引渡しを受ける場合は、クーリングオフ期間内は物品の引渡しを拒絶できる旨を告げなければなりません。

④第三者への物品の引渡しについての通知(第58条の11)

 購入業者はクーリングオフ期間内に、相手方から引き渡しを受けた物品を第三者に引き渡したときは、第三者の氏名等、引渡し年月日、物品の種類等を相手方に遅滞なく通知しなくてはなりません。

⑤物品の引渡しを受ける第三者に対する通知(第58条の11の2)

購入業者はクーリングオフ期間内に相手方から引き渡しを受けた物品を、第三者に引き渡すときには、物品の売買契約が解除されることがある旨をその第三者に通知しなくてはなりません。

⑥物品の引渡しの拒絶(第58条の15)
クーリングオフ期間内及び定められた引渡し期間内は、購入業者及び物品の承継人に対して物品の引渡しを拒むことが出来ます。

 

 
 

 

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